犬と暮らして気になったこと

保護された子犬は元の飼い主をずっと覚えているのでしょうか?

2匹のトイプードル

犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ

犬でも3日餌をもらい、可愛がられた恩は忘れないものだから、人間も受けた恩のありがたさを簡単に忘れてはいけない

犬一緒に暮らしたことがあるなら、「うんうん!!そうだね」と納得してしまう「ことわざ」ですよね。

子供のころから何匹もの犬と暮らしてきた私ですが、ほんの数日~数か月という短い期間一緒に暮らした犬達は、何歳になっても私のことを覚えてくれていました。

数週間一緒に暮らした犬の中には自宅に戻っても、私たち親子のもとに脱走しては帰ってきてしまう犬もいました。

犬は一緒に暮らした人間との繋がりを簡単に忘れる生き物ではありません。

ならば、理由があって飼い主と離れてしまった我が家のミルクは、最後まで最初の飼い主を忘れていなかったのでしょうか?

小さな子犬が一番最初に保護された家

今年のお正月、17歳のミルクは虹の橋を渡りました。

我が家の家族になった時には、まだ乳歯が残っているパピー犬だったミルクは、一番最初に保護されたときには推定3か月の子犬でした。

こんな小さな子犬が一匹で真夜中の飲食店の前に歩いてくるなんて考えられないことです。

捨てられたか?

盗難にあって放置されたか?

どちらかだったのでしょう。

小さな小さなトイプードルを飼い主が見つかるまでと保護したのは、その飲食店で働いていた女性でした。

彼女の実家は昔から大型犬を何匹も飼っていた家でしたので、彼女は両親に「飼い主が見つかるまで預かって」と世話を頼みました。

でも、この家がずっと大型犬を飼っていたのは、父親が犬をストレス解消のために殴ったり蹴ったりするためだったのです。

そのため、どの犬も若くして死んでしまいました。

なかには、何度も鎖を引きちぎり、私の実家に逃げ込んできた犬もいました。

そんな家に小さなトイプードルが保護され、隣に住む私の母はとても心配していたのです。

どんな環境でも飼い主に甘える子犬

犬小屋

真冬、まだまだ体温調整がうまくできないトイプードルの子犬は、昔大型犬が暮らしていた家の軒先にある大きな犬のケージの中に入れられました。

さすがに、ご近所の目が気になったのか?

この家のご夫婦は柴犬が暮らせるサイズの犬小屋を慌てて購入し、その犬小屋にトイプードルの子犬を入れました。

真冬、雪の降る日も、風が冷たく道路が凍ってしまうような夜も、家には入れてもらえず外の犬小屋で紐につながれている子犬

ごはんは獣医さんに「ドッグフードをふやかしてあげてください」と教えられ、一日一食ドンとふやかされてドッグフードを与えられていました。

とても子犬が一度に食べきれる量ではないドッグフードは、時間とともにさらに水分をすい、ドロドロになっていきます。

小さな子犬はお腹が空けば、そんなドッグフードでもチビリチビリと口にします。

寒い外、不衛生な環境、出しっぱなしのフード

子犬のお腹は緩くなり、ウンチはどんどんとびちゃびちゃになっていきます。

それでも、子犬は保護された家でつけてもらった名前を呼ばれると、ぶんぶんと尻尾を振り頭を下げながら今の飼い主に甘えるのです。

つらい環境の中でも尻尾を振る子犬

子犬のことが心配な母は、暇があったら子犬を見にいきました。

何度も頭をなで、寒いだろうと犬小屋に入れる敷物を渡し「家の中で飼ったほうがいいよ」と、時には話してみたりすることもあったそうです。

私も実家に帰った時には、できるだけ見に行くようにしました。

でも、保護した家族は犬とは外で飼うものと家の中に入れようとはしません。

子犬はいつもお腹の調子が悪く、出されたフードもだんだんと食べなくなります。

体は多分かなり弱っていたはずですが、誰が名前を呼んでも尻尾をぶんぶんとふって甘えてくる子犬は、2か月過ぎても飼い主はあらわれません。

この家ではこのまま子犬を育てる気もなく、新しい家族を探すことになり、母から「もう一匹育ててみない?」と我が家に連絡が来ました。

何年たっても飼われた恩を忘れない犬

私がこの子犬を引き取りに行った日、子犬の体には子犬らしい脂肪はどこにもついていませんでした。

ガリガリに痩せ、毛並みはガサガサで毛量はスカスカ、お尻にはウンチがガッチリとこびりついていました。

子犬の体力を考えると、体調を良くしてからシャンプーをすべきだったのでしょうが、そんなことも言っていられないほど子犬は汚れていました。

実家で大急ぎでシャンプーをし、食が細くなっていた子犬のためにミルクと離乳食を与え、吐いたり下痢をしないのを確認して自宅に連れ帰りました。

子犬は「ミルク」と名付けられ、新しい名前をすぐ覚えどの犬よりも賢く、私に対して忠犬でした。

この賢い犬は、その後何年たっても一番最初に保護してくれた家族を忘れませんでした。

たまに実家に帰ると、この家族の声が聞こえるだけで、耳をぴくんとさせ窓ガラスの向こうをじっと見つめながら尻尾をゆらゆらさせます。

昔飼われていた時の名前を呼ばれたら、ものすごい速さのスピードで尻尾を振り、体をこすりつけるようにして甘えに行きます。

私たち家族からすれば「あんな飼い方をされたのに・・・なんで甘えるの?」と思ってしまうのですが、ミルクにとってはどんな形であれ飼い主は飼い主だったのでしょう。

ミルクは最初の飼い主を覚えているたのだろうか?

雲の犬

何年たっても飼われた恩は忘れていなかったミルクを見ていると考えることがありました

一番最初にミルクの飼い主になった人と偶然会ってしまったら、ミルクはその人を見て尻尾を振り、すりすりと甘えるのではないかという不安でした。

もしもミルクが一番最初につけられた名前を忘れていなかったらどうしよう・・・

もしもミルクの一番最初の飼い主さんが「犬を返してください」といったらどうしよう・・・

そんな不安は数年間続きました。

子犬を自分の手で捨ててしまう飼い主なら、どんなことをしても渡したくはありません。

でも、盗まれて探し続けていた飼い主さんなら「もううちのワンコですから返せません」とは言えません。

犬と一緒に出かけた先で、じっとミルクを見つめている人がいると「もしかして、あの人が最初の飼い主さん?」という不安はずっとありました。

良かったのか悪かったのか?

ミルクは最後まで一番最初の飼い主さんに会うことはありませんでしたが、もしも偶然出会ったら?

賢かったミルクはその人の顔を尻尾をふりながらじっと見つめていたかもしれませんね

 

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